茶の湯的 ・ 建築 庭園 町並み観賞録

 
 
 
 

旧足立正別邸 ~神奈川県三浦郡葉山町~

あけましておめでとうございます。
本年も皆様方のご多幸をお祈り申し上げます。

新年ではありますが、最初の記事は昨年10月に訪れた旧足立正別邸です。古くからの別荘地・葉山に昭和8年(1933)に建てられた別荘建築で、個人所有で通常は非公開ですが、昨年10月の特別公開時に内部を見学させて頂きました。
 ※ 現在も居住空間として使用されている二階や和室以外の紹介となります。

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木造二階建て、桟瓦葺き・ハーフティンバー様式の外観で、和風建築の多い葉山の別荘建築にあっては珍しい、和洋折衷建築です。施主である足立正は大正~昭和期に活躍した実業家で、王子製紙やラジオ東京の社長、日本商工会議所の会頭などを務めています。

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設計は、早稲田大学大隈記念講堂などを手掛けた佐藤功一によります。内壁・外壁ともに、王子製紙が当時開発した「トマテックス」という植物繊維板を使用しています。

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玄関内部。市松模様のタイル床が美しい、シンプルな空間です。

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一階・応接室。東面にはステンドグラス、北側には暖炉が設けられています。

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一階・食堂。南面の窓はベイ・ウィンドウになっています。

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食堂の照明。

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東側階段室。

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階段室の天井は、「トマテックス」による市松模様が施されています。

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西側の階段。

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二階・南西隅にあるバルコニー。相模湾を望むことができます。

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戦後米軍に接収され、その後別の所有者に渡った旧足立正別邸ですが、目立った改築はされず、現在でもほぼ創建当初の姿を残しています。現在でも所有者の方が居住されていることから、いまのところ一般公開は年1回のイベント開催時に限られています。なお、すぐ近所には大正期の別荘建築である旧伏見宮家別邸(現・イエズス孝女会修道院旧館)も残っています。

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旧里見弴邸(西御門サローネ) ~神奈川県鎌倉市~

鎌倉市西御門にある旧里見弴邸は、明治~昭和期に活躍した小説家・里見弴(さとみとん)の住居として昭和初期に建てられた、和洋館並列型の住宅建築です(2016年8月訪問)。


昭和元年(1926)竣工の洋館。木造二階建て、茶色の板壁とバルコニーのパーゴラが特徴的です。

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玄関部分。壁面には幾何学的な模様が施されています。

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一階・玄関ホール。

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玄関ホールの小窓。F.L.ライトからの影響が感じられるデザインです。

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玄関ホールの窓とソファー。こちらの窓の桟も、ライト風の幾何学的なデザイン。

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建物奥(西側)から玄関ホールを見る。随所に見られるライト的なデザインは、お隣・藤沢市の旧近藤邸とも似ています。

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一階・応接室。玄関ホールの北側に隣接し、東側にはサンルームが設けられています。

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一階・サンルーム。玄関ホール、応接室、食堂の3室と繋がっています。

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玄関フロア奥にある階段。手摺には幾何学的なデザインが見られます(二階は非公開)。

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階段室のステンドグラス。

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階段踊り場からは、和館への渡り廊下が続いています。

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渡り廊下は、そのまま和館の縁座敷へと繋がります。和館は昭和4年(1929)の増築。

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和館内部。床が設けられた掛込天井の4畳半(手前)と、船底天井の3畳(奥)の二間からなります。

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4畳半の床の間。落掛けが二重に設置されるなど、凝った作り。

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生活空間であった洋館に対し、和館は里見の仕事場という位置付けでしたが、実際に里見が仕事場として使用することはあまり無かったようです。

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和館外観。茅葺屋根に高床式という、洋館に付属するタイプとしては珍しい構造です。

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里見弴自身が設計に関与したと言われる里見弴邸ですが、洋館はまさ夫人の希望によるもので、里見自身の趣味が反映されているのは和館だけのようです。現在は一級建築士事務所 studio acca の管理のもと(所有者は石川家)、貸しスペースとして活用され、毎週月曜日のみ公開されています。


 
 
 
 

横浜市開港記念会館 ~神奈川県横浜市~

横浜市中区、馬車道から日本大通りにかけて、多くの近代建築が残されています。大正6年(1917)に建てられた横浜市開港記念会館もそのうちの一つです。

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設計は、コンペで当選した福田重義の原案をもとに、山田七五郎(建設中に横浜市建築課長に就任)が担当しています。地下は鉄筋コンクリート造、地上は煉瓦造で、北東隅には鉄骨煉瓦造の高さ36mの時計塔が聳えます。

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大正12年(1923)の関東大震災では外壁と時計塔を残して焼失しますが、昭和2年(1927)に再建されました。

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屋根ドームは震災による焼失後、コンクリート製の屋根に変更されていましたが、平成元年(1989)になって創建時の姿に復元されました。

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一階・東面の正面玄関。内部は現在も公会堂として様々なイベントや講義などに使用されています。

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一階・玄関ロビーを西側から見る。左手の扉の奥は講堂、正面奥には二階への階段が見えています。

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タイルによるデザインが秀逸な、玄関ロビーの床。

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講堂。481名を収容できます。

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東階段。踊り場の大きな窓が目を引きます。

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八角形の南玄関ホール。

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二階ホール。壁と天井は漆喰で仕上げられ、豪華な天井飾りも見られます。

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二階ホールのステンドグラス。震災で焼失したものを、昭和2年に復旧したものです。

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八角形の特別室(旧貴賓室)。木工主体で、やや和の趣も感じさせます。

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中央階段。こちらにも巨大なステンドグラスがあります。

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中央階段のステンドグラス。黒船来航の場面を描いたもので、こちらも震災で焼失したものを、昭和2年に復旧したものです。

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横浜市開港記念会館はデザインだけでなく、煉瓦壁の要所に帯鉄を組み入れた「碇聯鉄(ていれんてつ)構法」と呼ばれる耐震工法が取り入れられるなど、構造面でも優れており、多くの近代建築が残る横浜市においても特に優れた建築の一つです。なお時計塔は通称「ジャックの塔」と呼ばれ、神奈川県庁本庁舎(キングの塔)、横浜税関(クイーンの塔)とともに、「横浜三塔」として親しまれています。

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横浜地方気象台本庁舎 ~神奈川県横浜市~

横浜地方気象台本庁舎は、横浜・山手地区にある、昭和2年(1927)に建てられた近代建築です。もともとは神奈川県測候所として建てられましたが、昭和14年の法改正で測候所の業務が国に移管されると同時に国の所有となり、現在でも現役の庁舎として使用されています。

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庁舎は鉄筋コンクリート造3階(地下1階)建て、外観はモダニズムを基調としたシンプルなデザインになっています。設計は神奈川県営繕管財課の技師・繁野繁造によります。

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アール・デコ調の装飾が見られる、玄関ポーチ。シンプルな外観において、最も装飾性の高い部分です。

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外壁は種石とモルタルを塗った後、モルタルだけ水で流し落とす「洗い出し」仕立てになっています。

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玄関脇の外壁だけ、タイルによる装飾が施されています。

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玄関ドアのアール・デコ調の意匠。

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一階・玄関ホール。モダンな外観とは対照的に、床は板張り、壁は漆喰で仕上げられています。

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玄関ホールにある、創建当初から存在したと考えられる柱時計。かつては電気信号を送ることで塔屋部分の時計と連動していたようです。

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旧所長室。庁舎は平成19年(2007)、安藤忠雄氏の監修のもと改修工事が行われ、同時に耐震補強が施されています。

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階段も木を基調としています。曲線をつけた手摺のデザインも見どころ。

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階段手摺にはアール・ヌーボー調の装飾が見られます。

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二階・応接室。創建当時の写真をもとに復元されています。

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応接室の照明。旧所長室と同じ、アール・ヌーボー調のデザインです。

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明治~昭和初期の洋館が多く存在することで知られる横浜の山手地区ですが、そのほとんどが住宅建築である中、庁舎建築である横浜地方気象台は異色の存在であり、隠れた名建築と言えるでしょう。平成21年には安藤忠雄氏の設計により新庁舎が増設されています。なお現役の庁舎であるため、見学できる部分は限られており(3階部分や地下は非公開)、公開日も平日に限定されています。

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ブラフ18番館 ~神奈川県横浜市~

ブラフ18番館は、横浜山手のイタリア山庭園に建つ洋館です。もともとはオーストラリア人貿易商の住宅として、関東大震災後に山手町45番地に建てられたもので、平成5年(1993)現在地に移築され、公開されています。


建物は木造二階建て、屋根はフランス瓦葺き、壁はモルタルで仕上げられています。

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北西隅にある玄関。ドーリア式の円柱と、チェッカーガラスをアクセント的に使用した扉が特徴的です。

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玄関床のタイルデザインも美しい。

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緑色の枠と格子で統一された、窓のデザインも秀逸です。

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西面と北面にはベイウィンドウが設けられ、鎧戸が付けられています。

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一階・居間。

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建物内の調度の多くは、「横浜家具」呼ばれる、横浜で生産されていた西洋風の家具です。

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居間のマントルピース。ブラフ18番館は平成3年(1991)に解体工事を受けていますが、こちらは建物内に解体前から存在する唯一のマントルピースです。

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一階・応接室。現在はイベントスペースとしても使用されているようで、訪れた際はビブラフォンのコンサートのリハーサル中でした。

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居間と応接室の東側には、サンルームが設けられています。

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一階・食堂。こちらにも多くの横浜家具が置かれています。

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階段を上がり二階へ。

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二階・寝室。置かれているベッドは、かつて市内南区にあった洋風建築「唐沢26番館」から移されたものです。

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二階・閲覧室。窓が多く、東側にはバルコニーが設けられた、開放的な空間です。

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ブラフ18番館は関東大震災後に建てられましたが、解体の結果、もともと山手町に存在した住宅建築の部材を多く使用していることが判っています。戦後は天主公教横浜地区(現・カトリック横浜司教区)によってカトリック山手教会の司祭館として長く使用されてきましたが、平成5年(1993)に横浜市へと寄贈され、現在は横浜市により管理されています。

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プロフィール

Hakka

Author:Hakka
関東近郊を中心に、古い町並みや建築(近代建築中心です)、日本庭園を訪ねています。どうぞよろしくお願いします。
※建築は基本的に内部公開されているものを取り上げています。
※画像の無断転載はお断りします。

 
 
 
 
 
 
 
 
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