茶の湯的 ・ 建築 庭園 町並み観賞録

 
 
 
 

上時国家庭園 ~石川県輪島市~

輪島市東部、町野町に位置する上時国家は、壇ノ浦の戦い後、能登に配流された平時忠(平清盛の義弟)の子・時国がこの地に館を構えたのが始まりといわれ、江戸時代には天領の大庄屋を務めました。邸内には江戸後期に築造された建物と庭園が残されています。


4~5階建てのビルくらいの高さがあるという、主屋。江戸時代の民家建築を伝える、貴重な遺構です。まずは主屋の各部屋から見ていきます。





「上広間」。折上格天井が見られる、格式高い間です。

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上広間の襖に金箔で描かれた「丸に揚羽蝶」が、平家末裔の邸宅であることを物語っています。

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「伺いの間」。奥の「御前の間」との間の欄間は、蜃気楼が彫られています。

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「御前の間」。「大納言の間」とも呼ばれ、縁に金の塗られた「金縁折上格天井」が、大納言・時忠を起源とする時国家の格式を物語っています。

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主屋の南方に、緑豊かな南庭が広がります。

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南庭は築山の手前に心字池を配した観賞式庭園、周囲は美しい苔で囲まれています。

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現地の案内では「鎌倉時代の様式」とされていますが、現在の建物が竣工した天保2年(1831)頃に改修されていると考えられます。

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護岸や橋添石には、力強い造形美が感じられます。

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鬱蒼とした木々で見えづらいですが、築山にも大ぶりの石を用いた、力強い石組が見られます。

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建物の西方には苔を中心とした平庭が広がります。

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建物東方にも池泉庭園があります。南庭とは遣水で繋がっており、こちらも江戸後期の作庭と思われますが、南庭と比べると池の形状や護岸の石組はやや陳腐な印象を受けます。

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東庭には枯滝石組が見られます。南庭の石組と比べると、石はだいぶ小ぶりになっています。

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上時国家の祖・平時国の父・平時忠は、「平家にあらずんば人にあらず」の発言で知られる、平家の官僚でした。壇ノ浦の戦い後、三種の神器の一つである神鏡を守った功績により命を助けられ、能登へ配流となりました。子の時国はこの地で300石の「時国村」を興し、以後、代々時国家を名乗り、豪農としてだけでなく、海運や製塩にも力を入れ、栄えました。現在、時国家の建物は国の重要文化財に、庭園は国の名勝に指定されています。

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次回は、江戸時代に上時国家から分家した下時国家を訪ねます。


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関東近郊を中心に、古い町並みや建築(近代建築中心です)、日本庭園を訪ねています。どうぞよろしくお願いします。
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